浦島太郎


歌川国芳画浦島太郎 昔々ある村に、心のやさしい浦島太郎という青年がいました。浦島さんが海辺を通りかかると、子どもたちが大きな亀をつかまえていました。そばによって見てみると、子ともたちがみんなで亀をいじめています。亀は涙をはらはらと溢しながら、浦島さんを見つめています。「それじゃ、お金をあげるから、おじさんに亀を売っておくれよ」そして浦島さんは子どもたちから亀を受け取って、海の中へ逃がしてやりました。亀は喜んで、海へ帰っていきました。
 それから二、三日立って、浦島さんが海に出かけて、魚を釣っていると、海の上にひょっこりと亀が頭を出して「浦島さん、浦島さん、この間は、ありがとうございました。浦島さんは、竜宮へ行ったことがありますか?」と言いました。「竜宮?さあ?竜宮って、どこにあるんだい?」「わたしがお連れしましょう。さあ、背中へ乗ってください」亀は浦島さんを背中に乗せて、海の中へずんずんと潜っていさました。やがて立派なご殿へ着きました。ご殿では、色とりどりの魚たちと一緒に、美しい乙姫様がお出迎えです。「ようこそ。浦島さん。この間は、亀を助けてくださってありがとう。お礼に竜宮をご案内します。ゆっくりしていってくださいね」浦島さんは、ご殿の広間へ案内されました。魚たちが、次から次へとごちそうを運んできます。気持ちのよい音楽が流れて、鯛や平目や海月たちの見事な踊りが続きます。
 もう一日、もう一日と、乙姫様に言われるまま、竜宮で過ごすうちに、三年の月日が立ってしまいました。浦島さんははっと思い出したように、「乙姫様、もうそろそろ家へ帰らせていただきます」「そうですか。それはお名残り惜しいですね。では、おみやげに玉手箱をあげましょう。大事な物が入っていますから、決して開けてはなりませんよ」浦島さんは、亀に送られて村へ帰りました。「おや、三年で、随分と様子が変わったな」ここは確かに、浦島さんが釣りをしていた場所ですが、なんだか様子が違います。浦島さんの家は、どこにも見あたりませんし、会う人も知らない人ばかりです。「どこなったのだろう?・・・あの、浦島の家を知りませんか?」「はい。たしか、浦島という人なら七百年ほど前に、海へ出たきり帰らないそうですよ」村の人の話を聞いて、浦島さんはびっくりました。竜宮の三年は、この世の七百年にあたるのでしょうか?
 浦島さんはさびしくなって、とうとう開けてはいけない玉手箱を開けてしまいました。中から、まっ白の煙が出てきて、それを浴びた浦島さんは、髪の毛もひげも真白のよぼよぼのお爺さんになってしまいました。

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