痺れの薬


 昔々、ある所に、大変けちで、節約を自慢している男がいました。おならを一つしても、無駄にはしません。「おならは、肥やしになるいきだ」と、言って、おならを紙袋に入れ、畑の土の中に活けてくるほどでした。ある晩、あまり自慢するので、自慢のはなを圧し折ってやりたいものだと、一人の友だちが男の家を訪ねて行きました。
 家に入ってみると、中は真っ暗です。明かりをつけるのを、節約してるんだなと思って、よく見ると、男が暗闇の中に、裸になって坐っています。「おい、おい、裸になって、何をしてる?」「これも節約よ。こうしていれば、着物もいらんからな」と、男は済ましていいます。「節約もいいが、秋も終わりで、そろそろ寒くなる。風邪でも引いたらどうする」「風邪どこるか、汗が流れて困るくらいよ」「これはまた、どうして?」友だちが驚いて聞くと、「あれを見ろ、あれを」と、男が言います。見ると、天井に岩のように大きい石が、細いひもで縛って吊るしてあります。「あのひもがいつ切れるかと思いや、怖くて汗が出る」これには、友達もビックリしました。ひやひやしながら、節約の自慢話をきいて、さて、帰ろうとすると、暗くて下駄が見つかりません。「ちょっと、明かりを貸してくれないかい」友達が頼むと、男はものも言わず、土間に落ちていた薪で、友達の頭を殴りました。「痛い!何をする。目から火が出た!」友達がさけぶと、男はすかさず言いました。「その日で、下駄を探してくれや」呆れた友達は、頭のこぶを撫でながら帰りました。間もなく、その年も暮れてお正月になりました。「よし、いいことを思いついた。これならあいつも敵うまい、去年の仕返しができるぞ。」わらしべを一本、丁寧に紙に包んだものを待って、新年の挨拶にいきました。「これで、煙管についた、やにでもとっておきれ。」さすがに、これ以上けちな物は、挨拶にも用意できないだろうと友達は思いましたが、さすがはけち男、今度は友達の家に新年の挨拶に来て、紙に包んだものを出しました、見るとそれは、あのわらしべを小さく切ったものです。「これは、ほんのお年玉だが、痺れの薬にでもしておくれ」
 これには友達も、開いた口がふさがらなかったということです。

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